2012年4月12日木曜日

さようなら

ベースを弾いてる松ちゃんがバンド辞めてしまった。ゆうべその話を聞いたところ。

元々あっちこっちにブレまくってくれる危なっかしい素敵な友達やったし、それで一緒に組んだとこあったから、あまり驚かなかった。前から自分100パーセントのバンドやりたいなって言うてたし。案外やれたもんやなってまず思った。自分ひとりでは絶対こんな風にバンドやるの無理やったし、そもそも歌ってないし、4月1日も無かったと思う。

下宿の隣人(ずぶの素人)を引き連れてベース弾きながらロールオーバーベートーベン歌ってた松ちゃんに「かっこええなぁ」て声を掛けたのが2年前の6月。ちょくちょく遊ぶようになって、去年の3月、たしか地震のちょっと後に「何かやらん?」と言い出して、昨日までの色々が始まった。ひょろっと背が高くて人当たりが良い割りに、話をしてみるといっつも何かにいらいらしてたり、いきなり突拍子もないことを思いついてそれを信じきったり次に会うとけろっと忘れてたりするところとか、古本のどっかのページで出会ったことのある様な気のする人だった。最初の頃、おれ声あかんわ~とか言うてもじもじしながら松ちゃんがケツ叩いてくれるの待ってたり、二の足踏んでなかなかデモテープ持って行かんからって松ちゃんが勝手に持ってったり、せっかく4人で出来上がりかけた曲を次の週には「やっぱちょっとちゃうねん」って混ぜっ返されたり。そんなあれやこれやは、言い換えるならば風が吹くってことだった。喫茶店でバンドの考え方とかライブのあり方とかを話すたび、おれら水と油やな~とか言いながら、分かって組んでた。演奏力とか歌唱力とかコネとか服装とかそんなんじゃなくて、やっぱバンドにはああいう人がいなくちゃならぬ。

急やし、日程決まってるなら暫くの間手伝おかって言うてくれたけど、4月1日あの場所での演奏が4人揃った最後ってのは上出来のお話だとも思う。実際嘘みたいな夜やったし。思えば初めて松ちゃんに出会ったのもその場所だった。ゆうべ4月1日の話になって、緊張とか興奮でわーッとやっちゃう演奏じゃなく、そういう要素に揺さぶられながらそれを捩じ伏せて成立させてやるって感じの演奏で、めちゃ良かったって言ってた。録音を聴いて自分もそう思った。演奏直後に思ってたよりも自分らは謙虚で誠実やった。

鍵盤の小森ちゃんも学校忙しくなっきてそろそろアカンって言ってたリミットが4月1日やし、どう考えてもこの編成は一旦終わる。けどあんま悲観的にならない。歌が真ん中にあるから、それをやる人とか楽器構成は本当はあんまり重要じゃない。でも少なくとも今はたったひとつの冴えたやり方がバンドだったと思えた。バンドやったところでモテそうな人は一人もおらんかったけど、ほんま面構えが良いバンドやったと思う。

最後の最後に、昨日まで「その事」には全く気付いてなかった自分にハートウォーミングな打ち明け話をしてくれたりして、別れ際に日本橋のレコ屋巡り行く約束してさよならした。なんか数日中にも「やっぱさあ、」とか言うてきそうな気もするけど。



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